2020年11月11日 焼酎の知識

焼酎を芋作りから行うプロジェクト(2020/11/11完結)

あくがれ蒸留所は、社内コンセプトでもある

 

「地域の農業の中に蔵がある」

 

を現実化させるために、焼酎を芋作りから始めるプロジェクトをスタートさせました。

 

この記事は4月の初投稿から11月まで経過を追った記事になっています。

 

あくがれ蒸留所で作る焼酎の原料(甘藷)は、現在契約農家さんに作っていただき、2人3脚で芋焼酎作りを行っています。

 

しかし本来ならば、あくがれ蒸留所は我々の焼酎を購入していただくお客様のために、芋焼酎に関わる全てのことを自分たちでやるべきであり、住所としている日向市、東郷町で芋作りをし、地域の活性化を図らなければいけないとも考えています。

 

2020年4月焼酎を芋作りから行うプロジェクト」スタートします。

 

芋焼酎ができるまで

 

芋焼酎の原料が芋だと言うことは大半の方が理解されていると思いますが、どういう工程から芋が芋焼酎になるのかを知っている方は多くはないんじゃないでしょうか。ここでは現在のあくがれ蒸留所が行なっている芋焼酎を作る工程をご紹介します。

 

先に芋畑の状況を確認したい!という方はこちらをクリック

 

  • 芋の選定
  • 麹作り
  • 仕込み
  • 蒸留
  • 熟成
  • ブレンド
  • 瓶詰め

 

芋の選定

 

あくがれ蒸留所の芋はほとんどが黄金千貫(コガネセンガン)という品種で作られています。あくがれに限らず他酒造様も多く使用されており、芋焼酎で使われる原料の大半がこのコガネセンガンになります。コガネセンガンはサツマイモの品種の一つであり、主に鹿児島、宮崎などで作られています。

 

麹作り

 

次に麦や芋、米などを蒸したものに種麹を振りまき菌を繁殖させ、原料のでんぷん質を糖に変えていきます。出来上がった麹に水と焼酎酵母を加えます。厳しい温度管理のもと5日間管理することで「もろみ」を作ります。麹やもろみの出来が焼酎の味を左右すると言っても過言ではありません。弊社のような小さな蔵元が一番気を使う工程でもあります。

 

仕込み

 

選定し蒸した芋を前工程でできたもろみと混ぜ合わせ、アルコールを発生させます。8日間管理するとあらたな「もろみ」が完成します。

 

蒸留

 

前工程で出来たもろみを蒸留し、芋の香りの溶け込んだアルコールを取り出します。このお酒を「原酒」といいます。弊社の蒸留につきましては下記ページでもご紹介させていただきましたので、ご興味がありましたらご覧ください。

 

>>あなたが好きな焼酎は常圧蒸留?減圧蒸留?その違いを説明します<<

 

また、あくがれ蒸留所では、蒸留の初期に留出される原酒を調整した「初留取り」がございます。初留取りはあくがれの中でも、香り高く深い味わいを感じていただける焼酎です。

 

>>日向あくがれ 初留取り<<

 

熟成

 

蒸留をした後の焼酎は貯蔵タンクで熟成させます。熟成させることでお酒の角が取れ、まるくなり、味が安定します。

 

貯蔵タンク

 

ブレンド

 

出来上がって熟成し、味の落ち着いた原酒に加水し調合する「ブレンド」という作業があります。ブレンドする原酒の割合などによって大きく味が変わってきます。

 

瓶詰め

 

加水し、調合された焼酎を瓶詰めしていきます。

 

 

 

 

芋畑の状況

 

あくがれ蒸留所では2020年4月、芋作りを行う畑作りを行います。銘柄は「大地の夢」弊社商品の「大地の夢」の原料になる甘藷です。無農薬で作ります。

 

あくがれ畑

写真の雑草が生え揃っている手前の部分があくがれ蒸留所の畑となります。大きさは1反(たん)の半分5畝(せ)あります。150坪、500m2くらいの大きさです。自然豊かなこの土地で芋を作っていきます。水はけ問題や、宮崎で農業をやる以上付き合っていかなければいけない台風問題など、様々な問題が山積みですが、まずは草刈りを行い、畝を作ったり1つずつ作り上げていきます。

 

 

草刈りを行いました。(2020/04/22)

草刈り後

草干し

荒れ果てていた土地の草を刈ります。とにかく草の量が多い。庭の草刈りとは訳が違います。

 

 

トラクターを使い耕起しました。(2020/04/27)

トラクター耕起

トラクターを使って土をほぐしていきます。畑として何年も使われていない状態だったので、土を混ぜて土の中に空気を入れます。

 

 

干し草を焼きました(2020/05/14)

刈り取った草は水分を含んでるため燃やすと煙が多くなかなか燃えてくれません。天日で乾燥させ、出来上がった干し草を燃やします。

 

 

トラクターを使い2度目の耕起を行いました(2020/05/20)

土に空気を入れるために再度コンバインにて土をほぐしていきます。1週間後は苗植えです。

 

 

苗植え作業(2020/05/27)

苗植えに合わせて、畝立て、マルチ貼り、柵立てを行いました。天気がよく、7月並みの気温という報道もあった中、杜氏を含めパート・アルバイトさん、そして東郷町まちづくり協議会から鈴野様、よこやま農園代表の横山ご夫妻のご指導を受け、苗植え作業を行っています。

 

 

柵立て(2020/06/02)

2020.0531 宮崎日日新聞より

この辺りでは鹿や猪、アナグマの被害に頭を悩ませる農家さんも少なくありません。弊社も獣害対策として柵を作りました。また、宮崎県内では「サツマイモ基腐病」の発生が見られるとして病害虫発生予報が発表されました。特に焼酎原料用の甘藷でも発病が報告されているとのことで、弊社でも監視を続けています。

 

 

草刈り(2020/06/10)

マルチを張って雑草対策をしていますが、マルチとマルチの間からは雑草が生えてきました。雑草を刈っていきます。

順調!と言いたいところなのですが、所々苗が育っていないところが見えます。

育っていない理由として

  • 育苗した当初、天気が良く暑かったため、苗に水が行き届かず枯れてしまった
  • 事前準備として、2、3日苗を水につけ根を伸ばしておく準備をしていなかった

と考えています。あくがれ蒸留所は農業元年、失敗もデータとして蓄積していきます。また、今回の育っていない部分も順調に伸びた蔓から植え直し、リカバリーする予定です。やはり一筋縄ではいかない農業は難しい!しかしやりがいがあります!

 

 

経過報告(2020/07/01~30)

順調に葉を広げ育ってきました。苗が育っていなかった部分に元気な芋の蔓を切って差し込む「挿し木」を行っています。6月10日の状態から比べると育っていますが、まだまだ育っていない箇所には挿し木を行います。

 

 

経過報告(2020/08/01~09/30)

ぎっしりと葉が生えそろいました。先月から行っていた挿し木もうまくいきました。ここ2ヶ月で目立った変化はありませんでしたが、柵外にはみ出た芋の葉を鹿が食べた跡なども見つかり、柵が役立ってると実感しています。

 

 

蔓切り(2020/10/05)

柵外にはみ出した芋の蔓をカットしました。

また、畝と畝の間の蔓もカットしました。葉が覆い茂ってくると葉にばかり栄養が行ってしまい、肝心の芋に栄養がいかず芋の成長が滞ることもあります。蔓を切ることで芋にショックを与えて、芋自体に栄養が行き、育つようにします。

試験的に芋を一つだけ掘っていました。約1ヶ月後に収穫を予定しています。それまでにどれだけ大きくなるのかが楽しみです。

 

 

収穫前日準備(2020/11/09)

覆い茂っていた蔓を切り、運び出します。明日11月10日は近隣にある「やまげほいくえん」の園児さんが芋掘りにやって来ます。芋が掘りやすいように蔓を刈り取り、掘る1時間前にマルチをはがします。5畝分掘っていただく予定で準備しています。

 

 

芋掘り(2020/11/10)

ついに芋掘りの日が来ました。芋の成長を楽しみに待っていたのは園児よりも蔵人だったかもしれません(笑)ドキドキしながら掘り上げた芋の大きさを見てホッと一息つくことができました。無農薬で作り上げた「大地の夢」収量も1トン近くを見込んでおり、まずまずの出来です。

 

 

まとめ

 

「焼酎を芋作りから行うプロジェクト」に参加している蔵人は全員が農業初心者です。農業の知識も経験もゼロですが、何よりも「いいものを作りたい」という気持ちを持ってお酒造りに真剣に取り組んでいます。本当に作れるのかと不安もありましたが、芋作りに関して素人同然の蔵人がここまでできたのは自信につながりました。問題もありましたが来年の課題とし、来年さらに良いものを作るための1年になったと思います。今月(2020/11)この芋を使って「焼酎:大地の夢」の仕込みも始まります。そちらの報告は別記事で行います!

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この記事を書いた蔵人
yusuke kuroki
大学卒業後、広告業界に20年。焼酎が好きであくがれ蒸留所に参加。現在はWEB周りの管理やコンテンツ作り、SNSをメインに担当。あくがれ蒸留所の好きな焼酎は「東郷大地の夢」
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