「今、芋焼酎の未来が危ない!」
というと大げさに捉えられるかもしれませんが、芋作りの現場において年々甘藷の生産量が減少している今、そこにある危機になる可能性があります。ではなぜ生産量が減少しているのか、今回は弊社も以前SNSで注意喚起として取り上げさせていただいたサツマイモ基腐病を説明します。
一般社団法人宮崎植物防疫協会が警告している基腐病の概要です pic.twitter.com/W0bZinaAH3
— あくがれ蒸留所 (@akugarejyouryuu) June 30, 2020
サツマイモ基腐病とは
サツマイモ基腐(もとぐされ)病と読みます。2018年より沖縄・鹿児島・宮崎の3県で発生が確認されており、原因となる病原菌はディアポーゼ・ディストランス(diaporthe destruens)という糸状菌でありカビの一種と言われています。菌の発育温度は15°~35°であり、サツマイモが栽培される夏季は菌が最も活発になる時期でもあります。菌が感染する植物はヒルガオ、アサガオ、サツマイモなどで知られるヒルガオ科のみであり、 現在確認されている病害の影響を受ける栽培作物はサツマイモのみ です。サツマイモの茎葉(けいよう)を枯らし芋を腐敗させる症状が見られます。
サツマイモ基腐病の被害拡大について
農林水産省「作物統計」より、あくがれ蒸留所が作成
農林水産省の「作物統計」のデータによると、2018年から2019年にかけて全国で収穫量は6%減、焼酎用としての生産がその大半を占める鹿児島県で6%、宮崎県は11%減にもなる。さらに先月の南日本新聞の発表によると作付け面積の5割が基腐病の被害をうけている。
外部リンク:
サツマイモ基腐病被害、全作付面積の5割超 鹿児島県内、2018年初確認後最大 南日本新聞
増加傾向にある理由
弊社の契約農家さん(宮崎)に確認したところ、特に打撃が大きいのが鹿児島県内で、今年は特に鹿児島県の芋農家から「余っていたら売って欲しい」との打診を数多く受けた。と言われていました。その理由として、サツマイモ基腐病は苗床からの感染を想定すると、定植・活着時は見た目に健全に見えても実際には感染しており、感染した苗が田圃に植えつけられ、生育前半に症状として現れます。つまり、育ててみないとその芋がサツマイモ基腐病にかかっているか否かは分からないということです。そして、1度発生してしまうと、土壌に残り毎年発生が続く恐れがあります。
排水について
サツマイモ基腐病は排水が悪いと発生しやすいので、排水対策を行っていても、梅雨の時期、鹿児島・宮崎を通る台風の時期と芋の生育時期が重なっており、排水管理を行っても排水が追いつかないという現状があります。事実、梅雨時期までの被害は少ないとの報告もあります。
サツマイモ基腐病を受けやすい甘藷の品種
現在、サツマイモ主要品種の全てに基腐病の感染が確認されていますが、その中でもコガネセンガン、ダイチノユメ、安納紅、安納こがね(ともに安納芋)の4品種は他の品種と比べて被害が早く、甚大な被害が予想されています。
ちなみに芋焼酎に使われている甘藷の中で一番多いのはコガネセンガンであり、芋焼酎の原料の代表格と言っても過言ではありません。
焼酎に使われるサツマイモの代表格「黄金千貫(コガネセンガン)」についてでもお伝えした通り、弊社のレギュラー商品である「日向あくがれ白麹仕込み」「日向あくがれ黒麹仕込み」の原料は100%コガネセンガンですので、今後も状況が変わらなければ死活問題になってくるかもしれません。
サツマイモ基腐病について、しっかりと防除対策を行っていたとしても、今現在効く薬は無いのが現状です。芋焼酎を作る弊社としては今後、続けて動向を見守っていきます。