2023年07月10日 焼酎の知識

【甕壷の魅力】甕壷仕込みの焼酎の特徴について

 

 

焼酎のラベルに、「甕壺仕込」こう書かれているのを見たことがありませんか?甕壷仕込みは、(かめつぼじこみ)と読みます。読んで字のごとく、甕壷で仕込んだ焼酎のことを言います。

 

 

「甕壷」という字が難しいのでミステリアスな雰囲気が漂っており、「よくわからないけど飲んでみたい」という気持ちが湧く人もいれば、「甕壷じゃないと飲まない!」という人もおられるでしょう。

 

 

では甕壷仕込みは、他の仕込と比べて何が違うのでしょうか。今回はそんな「甕壷仕込み焼酎」について紹介します。

 

 

甕壷仕込みとは

 

 

焼酎には製造過程において、一次仕込と二次仕込という工程があります。

 

 

  • 一次仕込は、製麴された麹と酵母を混ぜて醪(もろみ)を作る工程
  • 二次仕込は、その醪(もろみ)に原料を混ぜわせて二次醪(もろみ)を作る工程

 

 

この工程の舞台として、甕壷が用いられることを甕壷仕込みと言います。木桶や甕壷を使うのは昔ながらの方法であり、最近ではステンレスタンクが主流となり、甕壷を使用している蔵は多くありませんが、一方で甕壷にこだわる蔵もあります。

 

 

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甕壷仕込みの表記

 

 

「甕壷仕込み」と記載のある焼酎はいくつかあります。ではラベルに記載する条件はあるのでしょうか?

 

 

熊本国税局によると、

 

甕壷で仕込んでいるのであれば特に明確な規定は存在しない。一次仕込であっても、二次仕込であっても甕壷で仕込みを行なっている場合は「甕壷仕込み」という認識

 

とのことでした。

 

 

ちなみに、あくがれ蒸留所では一次仕込の際、甕壷を使って醪(もろみ)を発酵させ、二次仕込でステンレスタンクを使い、二次醪(もろみ)発酵をしています。

 

 

国税局の考えからすると、あくがれ蒸留所も甕壷仕込みに変わりはないのですが、弊社の商品に「甕壷仕込み」の文字はありません。

 

 

特にこだわりがあって記載を控えているわけではありませんが、一次仕込、二次仕込を全て甕壷仕込みで行われている蔵元さんと比べると、一次仕込でのみ甕壷を使っていない弊社は、言うなれば「一部甕壷仕込み」であり、「甕壷仕込み」と大々的に言ってしまうのは少し違うのではないかという思いもあるからです。

 

 

焼酎にこだわりを持っている方の中には一次仕込も二次仕込も甕壷仕込みの焼酎でなければ飲みたくない!という方もいらっしゃると思います。

 

 

そんな方を混乱させてしまうのも抵抗がありますし、焼酎に貼られているラベルは、しっかり消費者に説明できないことを記載するのは問題だとも思っています。

 

 

ちなみに瓶の代わりに、甕壷に入れて売られている焼酎もありますが、これは甕壷仕込みの焼酎ではなく、甕壷入り焼酎です。もちろん甕壷仕込みの焼酎が入っていれば甕壷仕込み焼酎です。この辺りもなかなか紛らわしいものがありますね。

 

 

甕壷仕込みの焼酎の特徴

 

 

「甕壷で仕込むと焼酎がまろやかになる」と言われます。なぜまろやかになるかというと、いくつか理由があります。

 

 

  • 気孔から空気を取り入れやすい
  • 温度変化が少ない
  • 微生物の存在

 

 

理由を順に説明していきます。

 

 

気孔から空気を取り入れやすい

 

甕壷はステンレスタンクと違って無数の気孔があります。綺麗な甕壷の形に見えても、細かい凹凸が存在し、その気孔に溜まった空気が焼酎に触れ、熟成を促進させ、焼酎をまろやかにする効果があると言われています。

 

 

温度変化が少ない

 

酒蔵にある甕壷は、地面に半分以上埋まっているものがほとんどです。地中に埋まっていることで、温度が変化しづらい環境になります。しかし、自然任せなので季節によって、また厳密に言えば甕壷の場所によっても甕壷ごとに温度の個体差は生まれてきます。温度変化が少ないという点は温度管理ができるステンレスタンクでの管理も遜色がないと思います。

 

 

微生物の存在

 

「長年使っている甕壷には、気孔の中に微生物が存在する。」と言われており、この微生物も発酵を手伝ってくれる一因になります。微生物というと怖いイメージも湧くかと思いますが、ここで説明する微生物は「蔵付酵母」といい、古くからその酒造、酒造場に住み着いている酵母のことです。この目に見えない微生物によってお酒は作られており、守り神と言われることもあります。

 

 

まとめ

 

 

今やほとんどの酒蔵がステンレスタンクに変わっているのは、焼酎の大量生産も出来、メンテナンスも作業も楽だからという理由があります。もちろんステンレスタンクもここまで普及しているからには、品質を損なわないように技術開発を行った結果だと思います。

 

 

ここで挙げたように甕壷仕込みには「まろやかになる」という事実が、気孔や微生物の存在から、現実的に味が変わってくる要因であることは証明されていると思います。

 

 

しかし弊社では一次仕込を甕壷で、二次仕込をステンレスタンクで行っていますので、経験(一次仕込も二次仕込みも甕壷で行ったこと)したことがありません。分からないがゆえに「仕込み全ての工程を甕壷で仕込む方法が良い」と言い切れません。※甕壷で仕込む方法が悪いといっているわけではありません。

 

 

焼酎の味は仕込む場所だけで決まるものではなく、あくまで一因です。甕壷仕込みの焼酎とそうでない焼酎、ご自身で飲み比べてみてみるのもいいのではないでしょうか。

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この記事を書いた蔵人
yusuke kuroki
大学卒業後、広告業界に20年。焼酎が好きであくがれ蒸留所に参加。現在はWEB周りの管理やコンテンツ作り、SNSをメインに担当。あくがれ蒸留所の好きな焼酎は「東郷大地の夢」
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