2023年06月26日 焼酎の知識

焼酎と麹(黄麹・黒麹・白麹)の関係について

焼酎や日本酒や泡盛など、日本のお酒造りに欠かせないもの、それが「麹」です。

 

 

日本酒・焼酎造りにおいては「一麹(いちこうじ)、二酛(にもと)、三造り(さんつくり)」という酒造りの工程を表した格言が存在します。

 

解説するとこの格言は

 

 

  • 一麹(いちこうじ)=麹造り
  • 二酛(にもと)=酒母(酛)造り
  • 三造り(さんつくり)=醪(もろみ)造り

 

 

を意味しており、その順番が早いほど重要な項目であることを表しています。

 

 

つまりお酒造りにおいて「麹造り」は何よりも優先されるべき項目。今回はそんな焼酎造りにとっても重要な「麹」について説明していきます。

 

 

そもそも麹とは

 

 

麹と聞いてどんな想像をされますか?焼酎に使われる原料という面もあれば、塩麹など料理に使われたり様々です。

 

 

麹の種類は、様々な分け方ができます。米麹、麦麹、豆麹など、発酵する原料によって分けたり、黄麹、黒麹、白麹など菌の種類によって分けたり、味噌麹、醤油麹、焼酎麹など使用目的で分けたりすることもできます。ではそもそも麹とは何なのでしょうか

 

 

麹菌はカビの一種

 

カビというと印象が悪くなってしまうかもしれませんが、麹菌はカビの一種であり、コウジカビとも言われています。麹菌はデンプンを分解して、発酵に必要な糖を作ります。これを糖化と言います。納豆や醤油、味噌、鰹節などをはじめ、パンやヨーグルト、チーズなど世界各地で様々な発酵食品が存在しますが、日本酒や焼酎、泡盛など麹を使ったお酒は、世界的に見ても珍しいと言われています。

 

 

麹は健康に良い

 

麹にはアミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼなど30種類もの酵素が含まれており、ビタミン類を生成する働きや、腸内細菌を元気にすることから美容健康面で女性に人気が出ています。美容面だけでなく、酵素から作られるオリゴ糖は腸内で乳酸菌などを増やす働きをします。

 

 

焼酎作りにおいて麹の役割とは

 

 

デンプンを糖化する

 

お米をはじめとし、芋や麦などの穀物の主成分はデンプンです。麹菌がデンプンを分解するとブドウ糖になり、ブドウ糖が酵母のエサになり、炭酸ガスとアルコールを作ります。

 

 

麹菌+穀物(デンプン)=ブドウ糖

 

ブドウ糖+酵母=炭酸ガス+アルコール

 

 

となります。

 

 

クエン酸を出す

 

製麴の間、デンプンからブドウ糖が作られ、ブドウ糖からから大量のクエン酸が生成されます。このクエン酸を利用し、醪(もろみ)を酸性条件にし、雑菌の増殖を抑えます。醪(もろみ)自体が酸っぱいのは不揮発性のクエン酸が蒸発していないからであり、気温の高い九州で醪(もろみ)が腐らないのを助けています。

 

 

黄麹・黒麹・白麹をはじめとした麹とその特徴

 

 

焼酎の銘柄には「黒○○」や「白○○」など、黒、白の名前がついた焼酎が多く存在します。

 

 

この「色がついている理由」は、焼酎を造る上で使用する「種麹」の種類の違いだとご存知でしたか?では黄麹、黒麹、白麹、どんな違いがあるのでしょうか

 

 

黄麹

 

味噌やお酢、味醂(みりん)をはじめとし、今も日本酒用として用いられている黄麹ですが、焼酎に用いられる麹も、約100年前(明治43年)まで黄麹でした。しかしクエン酸を造らない黄麹は雑菌に対して弱く、品質管理が難しいため、九州などの気温が高く、雑菌が繁殖しやすい環境にある焼酎作りには向いていませんでした。黄麹を使って日本酒を作る場合でも徹底した雑菌対策を行った上で低温管理を必要とするため、冬の時期に造られています。しかし現在では技術が発達し管理できるようになったので、黄麹を使った焼酎が造られるようになりました。黄麹を使って造られた焼酎は華やかでフルーティな香りが特徴です。口当たりもあっさりとして、芋っぽさを感じさせず、日本酒特有の吟醸香もあるので、焼酎が苦手な人にもお勧めできます。

 

 

黒麹

 

明治43年、沖縄で泡盛用の麹として使われていた麹を河内源一郎氏研究の元、黒麹の分離に成功。クエン酸を出し、雑菌の繁殖を防ぐ効果があるので、気温が高い南の地域での酒造りに向いており、重宝されている。黒麹を使って造られた焼酎は芳醇な香り、主張が強目なキレ、コク、クエン酸由来で辛口になり、疲労回復の効果があるとも言われている。

 

 

白麹

 

大正13年に、黒麹からの突然変異で生まれた白麹を河内源一郎氏が発見し、培養に成功した。黒麹の胞子の中で色の異なる胞子だったため白麹と言われていますが、実際は黄緑色と言われています。黒麹と同様クエン酸が多いので雑菌の繁殖を防ぎ、白麹の特徴として黒麹よりも糖化能力に優れている点がある。そのため芋の風味を活かした優しくマイルドでスッキリとした味わいが特徴です。また、黒麹と違い、手も蔵自体も汚れないため、一時は黒麹よりも人気を博したことがある。

 

 

それぞれの麹を比較する

 

麹の種類 クエン酸 日本酒 味わい 香り
黄麹 × 軽め 華やか、フルーティ
黒麹 × どっしり、キレ 芋感強い
白麹 × あっさり マイルドな香り

 

 

 

※河内源一郎氏について

 

明治16年に代々続く醤油屋に生まれる。幼少期から麹や醪に親しみ、興味を持ち熊本税務監督局(鹿児島工業試験場技官)として鹿児島に赴任。1910年に黒麹の培養に成功。14年後の24年に白麹の培養に成功。近代焼酎の父と呼ばれ、ここ100年の焼酎の歴史を変えた人物と言われる。昭和6年には「河内源一郎商店」を創業し、自らが開発した種麹の製造、販売を行なった。

 

 

まとめ

 

 

今回は麹の持つ力と、焼酎に使用する麹(黄麹・黒麹・白麹)を紹介しました。

 

 

焼酎は、麹以外の要素によっても味は全く変わってきますが、麹によって決められる香り、味の割合は少なくありません。次に焼酎を飲むときは自分の飲んでいる焼酎が何麹で作られているのか、好きなタイプから割り出してその麹を使っている焼酎を探してみても面白いと思うのでお試しください。

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この記事を書いた蔵人
yusuke kuroki
大学卒業後、広告業界に20年。焼酎が好きであくがれ蒸留所に参加。現在はWEB周りの管理やコンテンツ作り、SNSをメインに担当。あくがれ蒸留所の好きな焼酎は「東郷大地の夢」
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